レンマサSS 前編

  • 聖川SIDE-

初めて逢ったあの日は川でずぶ濡れになって帰った。
その為、親や教育係、使用人に物凄く怒られた。
けど、気分は心地良かった。
何故か?初めての「友達」っていうものが出来たからだ。
家の者は以来、外出を禁止していたが、目を盗んでは屋敷を抜け出して会いに行く。
相手は一つ年上の男。
だから、俺は本当の兄のように呼び慕っていた。

「お兄ちゃんっ…」
「!真斗…」

オレンジがかった茶髪が風に揺れた。
髪の隙間から覗く瞳はスカイブルーに輝いていた。

「お兄ちゃん、今日は何して遊ぶの?」
「今日は…んー…そうだ、秘密基地でも作らないか?」
「秘密基地…?」
「うん、所謂…2人だけの別荘だよ」
「2人、だけ…」

2人だけ…その単語に胸が高鳴る。
俺は彼の言葉に笑顔で頷いた。
その日から約1ヶ月間。
ほぼ毎日のように2人集まっては基地作りに没頭した。
お互いがこっそり家から持ち出した家具を飾ったりして、毎日が楽しかった。

…そんな幸福な毎日も、そう長くは続かなかったが…

「真斗!毎日家を抜け出してどこに行っているかと思えば…!!」
「レン…神宮寺の者として、自分が何をしているか分かるはずだな?」

俺達は対する家系の子だった。
俺達を見つけた互いの父親は血相を変えて2人を引き離す。
俺は離れたくなくて、必死に神宮寺へと手を伸ばした。

「お兄ちゃんっ--------!!!」
「真斗…!!」

必死に伸ばした手は空を掴み、無残にも届かぬまま、離れてしまった。
その日から俺達は一切連絡もつかず、本格的にあの日までが夢のように記憶から薄れていった。
ただ、思い出す度、咳止めていた心のダムが溢れるように涙がとめどなく溢れた。

  • レンSIDE-

その日から3年の年月が流れた。
オレは中2になった。
中2の春、新入生の入学式に目を疑った。
視界に飛び込む 蒼い短髪に泣きボクロ。
オレは無意識に走り出していた。

「っおい!」
「!…なんだ?」

っ…見間違い…?
深い蒼の瞳は鋭く細められ、オレが求めているアイツとはどこか違う。
深い絶望を感じた。

「?……お前っ…!!」
「あ、あぁ…悪い、人違いd」
「神宮、寺…?」
「!!」

思わず見開く。
名乗った覚えなどないのに、目の前のコイツはオレの名前を呟いたのだ。
聞き間違えだと思ってもう一度耳を澄ます。

「違うのか…?だったらすまない…」
「お、まえ…聖川、真斗…?」
「!や、やはり…」

鋭い視線が交差する。
オレは目の前の男の腕を掴むと、校舎裏へと引っ張った。

「痛っ…おい、離せよ!」
「聖川」

勢いよく自分の方へと引くと、その衝動でオレの腕の中に収まった。
苦しそうに身じろいでいる。

「お前、本当に聖川か…?」
「っ…だったらなんだ?…---神宮寺?」

冷たい視線の奥。
ほのかに昔と変わらない幼さとオレに対する眼差し。

「もう、呼んでくれないんだな?“お兄ちゃん”って」
「っ///あの頃はっ…」
「いや、いいんだ…また逢えただけで」
「神宮寺…」

  • 聖川SIDE-

そんな顔するな。
俺だって会いたかったんだ…
お前のキラキラ笑うあの笑顔が目に焼きついていつも離れなかったのに。
今のお前は変わったようだな…?

「聖川、オレさ…」
「…?」
「あの時からずっとお前のこと、忘れられなかったんだ…。きっとずっと恋焦がれていたんだと思う…」
「つ、つまり…?」

声がかすれてくる。
コイツから目が離せない。

「好きってことだ」
「っ///」

口付けられる。
俺の返事も待たずに。
息苦しくて、酸素を求めて口を薄く開けば、容赦なく強引に舌をねじ込んでくる。
逃げようにも、何度も執拗に絡んでくるから、その望みは儚く消えた。
俺はコイツから逃れられないんだ。

「っふ、ん、んぅ、んっ……///」

吐息と共に漏れる声は自分のものとは思えないほどに酷くいやらしく、恥ずかしくて顔に熱が集中する。

「…んん…っ」

さすがに苦しくて俺が弱々しく腕から力を抜くと、絡めた舌に軽く吸い付き、チュッとリップ音を立てて漸く離した。
2人の唾液が糸を紡ぎ、俺の顎を伝って落ちる。

「っはぁ、はぁっ…な、何する…」
「何って…オレがしたくてしたんだけど?」
「っ…ば、馬鹿!」
「!そうだ、ちょっと付き合え」
「や、やめろ!腕を掴むな!!離せ!!!」

強引に腕を引っ張られる。
俺は成す術もなく、神宮寺に連れて行かれた。
>>続